年末、衝撃が走った。韓国で大統領が突如「非常戒厳」を宣言、戒厳令司令官(陸軍参謀長)が非常戒厳令を公布。しかし、僅か6時間後に解除。韓国与党が過半数を割り、国会運営に窮した挙句の最終決断。非常戒厳が宣布されると、大統領は「(法律に基づき)令状制度,言論·出版·集会·結社の自由,政府や裁判所の権限に関し特別な措置」をとることができる(大韓民国憲法77条3項)。憲法の根幹部分が停止される。戒厳令の発動で大統領は絶大な権限を手にする。しかし、「戒厳」は憲法上「戦時·事変又はこれに準ずる国家非常事態」の場合でなければ発動できない(77条1項)。しかも、国会が過半数議員の賛成で戒厳解除を要求すると大統領はこれを解除しなければならない(77条5項)。与党が国会議席過半数割れの状態下で、何ゆえに大統領が「非常戒厳」を宣言したのか極めて不可解。報道では、戒厳司令官となる朴陸軍参謀長との間で事前の相談もしていなかったとのこと。誠に杜撰。大統領は、憲法84条で「内乱又は外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない」とされている。米国ではトランプ裁判で、連邦最高裁が「大統領在職中の公的行為」は免責されると判決。韓国ではこれと異なり「在職中」起訴されないだけで、在職中の違法行為は退任後処罰される。「内乱」に該当すれば在職中でも起訴・処罰される。

 権力の濫用は誠に恐ろしい。

弁護士 新垣勉