債務不履行・不法行為の損害金には、支払うべき日から支払時まで遅延損害金が発生する。例えば、貸金未返済の場合、弁済日から利息相当損害金あるいは法定遅延損害金が発生し、不法行為の場合、不法行為の日から法定遅延損害金が発生する。債務者の中には、長い間遅延損害金を支払わない者もいる。この場合、民法405条は債権者の一方的意思表示により遅延損害金を元本に組入れることを認めている。これは、債権者が受領すべき遅延損害金を有効活用できないことを考慮して債権者の利益を保護するため。不法行為の場合に遅延損害金を元本に組み入れることができるか否か争われる事件が起きた。2022年1月、最高裁判所が新しい判断を示した。

 不法行為については、民法405条は適用も類推適用も認められないとの判断。その理由に不法行為の損害は「定かでないこと」、「不法行為の時から遅延損害金が発生する」ことを挙げている。

 この事案は、被害者が不法行為発生時から遅延損害金を元本に組み入れることを主張した事件であった。しかし、不法行為による損害賠償が確定した後、債務者が遅延損害金を支払わない場合にまで元本組入れを否定する趣旨かは不明である。

弁護士 新垣勉