ここ数年、国の基本的な在り方を定める憲法を変えるべきか否かという議論が起こっている。先日の選挙でも、改憲勢力の議席が三分の二に届くか否か、という点が取り上げられていた。この「三分の二」という割合は、実は、変えられる対象となる憲法そのものに定められている。正確には次の通りである。「第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」憲法を変える第一歩として、まずは「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」による発議が必要なのである。

 ただ、ちょっと待ってほしい。例えば先日の参議院議員選挙の投票率は48.80%、18歳、19歳に限って言えば31.33%だったという。参議院が半数改選であることや選挙区で死票が相当程度出ることを度外視し、極端に表現すれば、48.80%の「三分の二」、つまり国民の32.5%が賛成すれば、憲法を変えようという発議が出来てしまうわけである。10代で考えれば20.8%である。

もちろん、これは数字のトリックであり、実際とは異なる。死票を考慮すると、より少ない割合の得票で「三分の二」を確保できてしまう。そうすると、知らないうちに憲法を変える話が進んでいた、と感じる人も出てくるだろう。「若者の政治離れ」なのか、「政治の若者離れ」なのかという議論はあるにしても、多くの人が関心を持たない(持てない)中で憲法が変わる動きが起きるということについては、大きな危惧がある。それは、憲法が本来的には権力を縛る存在であることは当然として、実際には、権力を持たない一個人も憲法に従う必要があるからである。例えば、日本国憲法が武力行使を認める方向に変えられてしまえば、投票率に関わらず、日本国民の100%がそれに従わざるを得ない。

 今こそ、多くの人に憲法に関心を持ってもらう必要がある。

沖縄弁護士会は、youtube上でも活躍中の芸人「せやろがいおじさん」と、井端正幸・沖縄国際大学教授(憲法学)をゲストに迎え、2019年9月21日(土)午後1時30分から、沖縄県青年会館(入場無料)で憲法を考えるイベントを開催する。初めて憲法について考えるという人にとっても、良い機会になると思う。